日欧の暖房方式の違い

茹で落花生

2014年10月30日 07:16

換気計画で重要なポイントを語る前に、欧州(具体的にはドイツ・オーストリア)と日本の暖房方式の違いについて考えてみたいと思います。

ドイツ・オーストリアの冬は、日本に比べると期間も長く寒さも厳しいために、建物全体を暖房する「全館暖房」がスタンダードとなっています。
建物の地下などにボイラー室があり、そこで沸かしたお湯を建物全体に24時間循環させています。建物の内部の各室で温度差が発生することは無く、リビング、ダイニング、主寝室などの居室だけでなく、廊下、洗面所、トイレなど、どの場所に行ってもとても快適な温度が保たれています。

当然、暖房にかかるエネルギーは相当量必要となるので、原油が高騰している現在では、建物の断熱性を日本では考えられないくらいに高めたり、ペレットなどの木質バイオマスを利用したりする動きが本格化しています。
(ペレットなら地域で作ることが出来るのでコストコントロールしやすい)

我が家屋上の断熱状況です。厚さ185ミリ・熱抵抗値4.6の羊毛断熱材を敷き、Ⅱ地域(青森・岩手・秋田)の次世代省エネ基準をクリアしているのですが、ドイツだとこの2~3倍の厚みの断熱材が使われています。

日本の場合、ドイツ・オーストリアに近い気象条件である北海道や北東北で全館暖房方式が採用されている以外は、「局所暖房方式」という部屋ごとに暖房を行なう方式、つまり、それぞれの居室に設置した石油ファンヒーターやエアコンで個別に暖房を行なう方式が主流となっています。

この方式は、暖房器具のある部屋はある程度快適に過ごすことが出来ますが、廊下、洗面所、トイレなど、暖房を行なっていない場所はかなり室温が低くて不快な状態となります。

ちなみにドイツでは、室温が17度以下になるような建物は「人権を侵害している」として、オーナーが法的に罰せられます。
つまり、室温が17度以下の環境は「人間が快適に暮らせない環境である」ということを国が認めている、ということを示しています。

「どてらを着込んでコタツでみかん」「寝る時には足元にゆたんぽ」、どちらも日本の伝統的な冬のスタイルですが、これは局所暖房よりもレベルの低い「採暖」という方式で、これだと居室でも室温が低くかなり不快な状態となっているはずです。
(コタツや布団から出るのにかなりの「気合い」が必要なはずです)

局所暖房方式は、全館暖房に比べるとランニングコストは当然低くはなりますが、快適さが損なわれたり、結露やカビの発生などで建物にダメージを与えますし、何よりも建物内に温度差が出来ることで体(血管)に負担が掛かって命を落とす、という事例が多いのが問題となります。(データでもハッキリ出ています)

高気密高断熱 + 薪ストーブという組み合わせは、快適な全館暖房を実現することが可能な組み合わせではありますが、その実現のためには薪ストーブの位置を含めたプランニング、機種の選定、そして暖気を建物全体に行き渡らせるための換気計画が必要となってきます。

次回記事では、その換気計画について語りたいと思います。



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